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辻村 憲雄
放計協ニュース, (71), p.2 - 5, 2023/04
日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所(核サ研)において現在運用されている熱ルミネセンス線量計を用いた個人線量計「TLDバッジ」は、松下産業機器株式会社(松下産機)と共同で開発され、1982年に運用が開始されたものである。以来、核サ研のみならず国内外で長きにわたって使用されてきたが、2019年をもってメーカーによる新規生産の受付が、さらに2027年には読取装置類の保守サービスも終了することになった。また、個人線量計の性能認定制度がわが国でも導入されることになり、改正RI法施行規則(2023年10月から)の下では、認定済み個人線量計による測定サービスの実施が要求される。これら状況の変化に鑑み、核サ研では、内部実施による測定の継続を断念し、認定を受けた民間の個人線量測定サービス会社の供給する個人線量計に今後切り替えることとした。本稿では、TLDバッジについて、その開発経緯と設計コンセプトを実用量の歴史的発展とともに概説するとともに、40年以上にもわたるその運用経験から得られた知見を紹介する。
高橋 史明
原子力のいまと明日, p.109 - 111, 2019/03
日本原子力学会では、一般向けの解説として、「原子力のいまと明日-東京電力福島第一原子力発電所事故の経験から」の出版を企図した。この解説書では、原子力発電所の概要、東京電力福島第一原子力発電所事故やその後の対応等とともに、放射線の基礎知識や利用についても解説を与える。本稿では、放射線計測や防護で用いられる単位として、基本となる吸収線量などの物理量、放射線防護の目的で用いられる防護量及び計測のために定義される実用量を解説する。また、放射線作業環境で実測され、内部被ばく防護の基本となる放射能の単位についても説明する。さらに放射線管理の現場で有用な単位として、放射能と線量を関係づける線量率定数を紹介する。
Otto, T.*; Hertel, N. E.*; Bartlett, D. T.*; Behrens, R.*; Bordy, J.-M.*; Dietze, G.*; 遠藤 章; Gualdrini, G.*; Pelliccioni, M.*
Radiation Protection Dosimetry, 180(1-4), p.10 - 16, 2018/08
被引用回数:19 パーセンタイル:89.32(Environmental Sciences)国際放射線単位測定委員会(ICRU)のレポート委員会No.26は、体外放射線に対する放射線防護のためのモニタリング量(実用量)について、実効線量を基に定義し放射線のタイプとエネルギー範囲を拡張するとともに、目の水晶体と皮膚の確定的影響の評価も考慮した新たな提案をした。これらの提案は、現在使われている実用量について、概念及び技術的な欠点を克服するものである。本論文では、提案された実用量について、規制上求められている放射線モニタリング量に関する改善点に焦点をあてながら概要を述べる。
遠藤 章
保健物理, 52(1), p.39 - 41, 2017/03
放射線の影響からヒトを防護するためには、被ばくの程度を定量化する必要がある。この目的のために、国際放射線防護委員会(ICRP)と国際放射線単位測定委員会(ICRU)は、防護量と実用量からなる線量の評価・測定の体系を提案した。この線量体系は、放射線防護の実務に広く定着し、利用されている。しかし、加速器の普及による高エネルギー放射線への対応など、現在の線量体系にはいくつかの解決すべき課題がある。これらの課題について、ICRPとICRUは連携して検討を進めており、近く、新たな線量体系を提案しようとしている。本発表では、現行の線量体系の見直しに関するICRPとICRUの検討の過程を概観し、今後導入されようとしている新たな線量体系について紹介する。
真辺 健太郎
保健物理, 52(1), p.35 - 38, 2017/03
平成28年11月2日に大阪科学技術センターで「保物セミナー2016」が開催され、150名の参加があった。今回のセミナーは、「防護量と実用量 最新の動向」、「福島から考えるこれからのリスクコミュニケーション」及び「低線量放射線のヒトへの影響」の3つのテーマで構成されていた。各テーマでは、その分野の著名な専門家により、最新の動向や問題解決に向けた提案等の講演があった。他に、原子力規制庁の専門官による「放射線障害防止法関係の最近の動向」と題する特別講演があり、最近のトラブル事象や立入検査の実施状況、IAEAの総合的規制評価サービスを受け入れた結果等が紹介された。セミナーでは、各講演に対して、現在あるいは今後に想定される課題について参加者より質疑があり、その解決策等に関する議論も展開された。本稿は、セミナーでの講演や議論の概要、各テーマ等に関する著者の所感を取りまとめたものである。
山口 恭弘
FBNews, (345), p.1 - 3, 2005/09
放射線防護の分野において、「防護量」と「実用量」という2種類の線量が、国際的な委員会により勧告,提案され我が国の法令にも取り入れられて使われている。しかし、「両者の関係が複雑で分かりにくい」,「防護量だけで管理できるのでは」といった批判が現在もあり、議論が行われている。本稿では、この議論を整理して紹介する。
三枝 純; 吉澤 道夫; 谷村 嘉彦; 吉田 真
Radioisotopes, 51(1), p.26 - 33, 2002/01
2001年4月の放射線防護法令の改正において中性子のフルエンスから実用量への換算係数が変更された。このため代表的な線量計について、法令改正に伴う影響を考察したが、線量換算係数の変更により、線量当量レスポンスの形はあまり変わらないことがわかった。また、各種の線量計を、さまざまなスペクトルを有する場において使用した場合に得られる指示値と真の線量当量との比について検討した。その結果、Cf-252線源を用いて校正した線量計を、さまざまなスペクトルを有する場において使用した場合、指示値と真の線量との比が1~2の範囲にあるのは、代表的なレムカウンタで23~77%、各種個人線量計で9~82%程度であることが判明した。
吉澤 道夫; 辻村 憲雄*
保健物理, 36(1), p.18 - 23, 2001/03
2001年4月からICRP1990年勧告を取り入れた新しい放射線障害防止法令が施行される。この改正法令では外部被ばくモニタリングに関しても、用いる線量の意味の変更等が行われた。これを受けて、外部被ばく線量の測定・評価マニュアルの改定が行われた。本報では、新しいマニュアルに関して、改正法令による主要な変更点である、(1)1cm線量当量等と線量換算係数(場のモニタリング量と個人モニタリング量の区別,換算係数変更の影響)、(2)1cm線量当量等の測定(サーベイメータや個人線量計の対応)、(3)個人モニタリング(3mm線量当量と眼の水晶体の線量評価,体幹部不均等被ばく時の実効線量の算定など)に焦点をあてて、変更の内容とその影響について解説する。また、場のモニタリング、測定器の校正及び線量の記録についても簡単にふれる。
吉澤 道夫
放計協ニュース, (23), p.2 - 4, 1999/03
国際放射線防護委員会(ICRP)は、1990年勧告で変更された線量概念に基づく外部被ばく線量評価のための新しい線量換算係数をPubl.74として出版した。このうち、被ばく線量管理上重要なのは、実用量への換算係数である。そこで、新しい実用量への換算係数と現行のものを比較するとともに、特に変更が大きな中性子に関して、その変更が及ぼす影響等を考察した。新しい換算係数は、光子については現行とほとんど変わらないが、中性子については最大1.5倍高くなっている。この変更が及ぼす影響を評価すると、実際の原子力施設等では10~30%線量当量が増加することになる。また、既存の中性子線量計を用いて引き続き実用量を測定評価することで管理実務上問題ない。
吉澤 道夫; 水下 誠一
保健物理, 34(3), p.319 - 322, 1999/00
本年4月に放射線審議会基本部会から「外部被ばく及び内部被ばくの評価法にかかわる技術的指針」が出された。その要点は以下のとおりである。外部被ばくに関しては、しゃへいにかかわる限度及び管理区域にかかわる基準が1cm線量当量に代わり実効線量で規定されることになること、3mm線量当量の測定義務は原則なくなること、不均等被ばくの評価法は法令で規定されなくなることなどが主な変更点である。内部被ばくに関しては、年摂取限度に代わり、線量係数が採用されること、排気・排水中の濃度限度の算出において年齢依存が考慮されること、法令で規定されない核種の濃度限度等に半減期の区分が加えられること、摂取量の算定方法は法令で規定されなくなることなどが主な変更点である。この技術的指針が出されたことで、ICRP1990年勧告の取入れに関する法令改正作業が本格化すると予想される。
吉澤 道夫
保健物理, 33(1), p.7 - 11, 1998/00
国際放射線防護委員会(ICRP)は、1990年勧告で変更された線量概念に基づく外部被ばく線量評価のための線量換算係数をPubl.74として出版した。このうち管理実務上重要なのは、実用量(周辺線量当量、方向性線量当量及び個人線量当量)への換算係数である。新しい換算係数を現行のものと比較すると、光子についてはわずかな変更しかないが、中性子については最大1.5倍高い値となっている。新しい換算係数を法規制に適用するためには、通常モニタリングの必要がないため換算係数が示されなかった3mm線量当量の測定義務を合理化する必要がある。放射線管理への適用について、中性子線量換算係数が高くなった影響を評価し、線量当量の増加は原子力施設等で10~30%程度であること、実用量を用いることに問題がないことを明らかにした。校正実務への適用においては、サーベイメータ等と個人モニタとで使用する換算係数が異なることに注意する必要がある。
山口 恭弘
保健物理, 33(1), p.12 - 15, 1998/00
国際放射線防護委員会(ICRP)は、外部被ばく線量評価に用いる新しい線量換算係数を含むPublication 74を刊行した。この線量換算係数は、ICRP1990年勧告で新たに導入されたり変更された幾つかの係数や物理データに基づいて計算されたもので、今後放射線管理を実施していく上で重要なものである。Publication74では、人体の被ばく量を表すためにICRPが定義した防護量と、それを測定によって評価するために国際放射線単位測定委員会(ICRU)が定義した実用量に分類し、それぞれの換算係数を決定するとともに、両者の関係を解析している。その結果、ICRP1990年勧告による変更後も、実用量を用いた線量測定によって、線量限度を規定している防護量を安全側に評価できるとの結論を下した。
山口 恭弘; 遠藤 章
JAERI-Conf 96-011, 63 Pages, 1996/07
本報文集は、1996年3月14日に開催された第2回「最近の外部被ばく線量評価法に関するワークショップ」の報文を収録したものである。今回のワークショップは、外部被ばく線量測定に用いられている「計測実用量」に焦点を当てた議論を行い、今後の検討課題を整理する目的で開催された。ワークショップでは、計測実用量の導入に至った歴史的な背景、現行法令における解釈、線量測定への具体化の現状がレビューされた。また、ICRPの1990年勧告を反映した線量換算係数の再評価の状況が紹介された。これらを踏まえ、計測実用量の必要性、定義法、線量計の校正への適用に関する討論を行い、問題点を整理した。その結果、人体線量と計測実用量を関係付ける論理体系に関し、更なる検討が必要であることが明らかになった。
遠藤 章
no journal, ,
放射線の影響からヒトを防護するためには、被ばくの程度を定量化する必要がある。この目的のために、国際放射線防護委員会(ICRP)と国際放射線単位・測定委員会(ICRU)は、防護量と実用量からなる線量の評価・測定の体系を提案した。この線量体系は、放射線防護の実務に広く定着し、利用されている。しかし、加速器の普及による高エネルギー放射線への対応など、現在の線量体系にはいくつかの解決すべき課題がある。これらの課題について、ICRPとICRUは連携して検討を進めており、近く、新たな線量体系を提案しようとしている。本発表では、現行の線量体系の見直しに関するICRPとICRUの取り組みを概観し、今後導入されようとしている新たな線量体系について紹介する。
辻村 憲雄
no journal, ,
高エネルギー域における放射線モニタリングのニーズの拡大等に伴い、従来の実用量の考え方の見直しが進められ、個人線量計の指示値をそのまま防護量(実効線量)に関連付けるという提案もあるようである。これは、一見して、モニタリングすべき線量の体系の単純化・合理化につながるように見えるが、その考えの適用の仕方如何によっては、現在の個人モニタリングの在り方にむしろ悪影響をもたらしかねない。線個人線量計(電子式個人線量計)と中性子個人線量計(CR39とアルベドTLDの組み合わせ)を例に、仮にそれらを正面入射条件のH(10)ではなく実効線量で校正したとき、正面入射以外の条件でどれだけ実効線量を過小に評価するかを実験と計算の結果をもとに示す。
遠藤 章
no journal, ,
医療分野における放射線の利用はめざましく、それに携わる医療従事者の放射線防護は非常に重要である。防護の対象となる放射線は、エックス線、放射性医薬品から放出される種々の放射線、放射性同位元素製造・治療用加速器の運転に伴い発生する中性子等、多様でエネルギー範囲も広い。この目的のために、国際放射線防護委員会(ICRP)と国際放射線単位測定委員会(ICRU)は、防護量と実用量からなる線量の評価・測定の体系を提案した。本発表では、現在の線量の評価と測定の考え方の全体像を概観し、外部被ばくモニタリングに対して、今後導入されようとしている新たな線量体系について紹介する。
高橋 史明
no journal, ,
放射線防護の目的を達成するため、ICRU(国際放射線単位測定委員会)及びICRP(国際放射線防護委員会)は多様な線量を定義している。また、これらの線量は最新知見の反映や放射線の利用拡大への対応等のために定義が変更されており、ICRU及びICRPは2020年に外部被ばく線量測定に用いる実用量の変更を公知した。このような背景に鑑み、放射線被ばくに関する多様で複雑な「量」の体系について整理し、専門的な視点での最新の動向を共有し、今後取り組むべき課題,論点を抽出することを目的とした研究会が執り行われることとなった。本講演では、ICRU及びICRPが定義する線量をレビューするとともに、放射線防護の履行における適用方法等を解説する。さらに、ICRP2007年勧告の主旨を国内の放射線基準に取り入れた際の課題や留意点を紹介する。
高橋 史明; 佐藤 薫; 佐藤 大樹
no journal, ,
国際放射線防護委員会(ICRP)が2007年勧告に準拠する外部被ばく防護に用いる線量換算係数を2010年に公開した際、簡易ファントムに基づく現行の実用量が新しい換算係数に基づく実効線量を過小評価する可能性を示した。その後、国際放射線単位測定委員会(ICRU)は実用量の見直しに着手し、新しい実用量をICRU Report 95として2020年に公開した。国内の放射線規制へ2007年勧告を取り入れた後でも、現行の実用量に基づき設計された線量計や放射線モニタを継続して利用する要求や状況も想定される。そこで、IAEAが編集したスペクトルデータを用いて、種々の中性子外部被ばく条件に関して、ICRU Report 57の実用量とICRP Publ.74及びICRP Publ.116の実効線量の関係の解析を進めた。解析の結果、原子力・放射線施設やその周辺で想定されるほとんどの中性子場において、現行の実用量に基づく計測器や線量計を用いた測定により、2007年に準拠する実効線量を安全側に評価できる一方、2007年勧告に準拠する実効線量の現行の実用量に対する比は中性子場に依存して大きく変動することが確認された。
吉富 寛; 辻 智也; 西野 翔; 深見 智代; 谷村 嘉彦
no journal, ,
放射線管理で用いられる線量計は、実用量をベースに設計・校正されている。2020年12月に、国際放射線単位測定委員会(ICRU)は国際放射線防護委員会(ICRP)と合同で、実用量の定義変更を勧告する報告書(ICRU Report 95)を発刊した。この概念が導入された場合に、現行の線量計が引き続き使用できるか、検討しておく必要に迫られている。まず、放射線標準施設棟に整備されている代表的な光子、線及び中性子校正場について、そのエネルギー分布の詳細な評価から新たな実用量に対応した基準線量を算出することで、新たな実用量での校正や試験を可能とした。これらの校正場を利用して、市販線量計の校正及びエネルギー特性試験を行ったところ、特に中性子線量計や眼の水晶体用線量計の線に対する校正定数などに大きな変化がみられた。エネルギー特性についても、中性子については大きな違いがみられ、Am-Beで校正した線量計は熱中性子に対して1.9倍の過大応答を示した。これらのことから、新たな実用量の導入に際しては、まずどの線種、エネルギーで校正するかが必要なことが明らかになった。
吉富 寛; 辻 智也; 深見 智代; 西野 翔; 谷村 嘉彦
no journal, ,
外部放射線防護のための放射線測定は実用量を用いて行われている。国際放射線単位測定委員会(ICRU)は2020年12月にこの実用量の定義変更を勧告するレポート(ICRU Report95)を発刊した。本研究は、原子力施設における光子スペクトルの測定から、これらの放射線場における実用量変更の影響を調査することを目的として実施した。原子力施設においては、多くの場合、線源から放出される光子がそのまま到達した成分と、それらが遮蔽などの周囲の構造物により散乱された光子の成分が混在した場で放射線測定がなされる。すなわち、実用量変更の影響調査をするためには、線源の情報だけではなく、場のスペクトルを知る必要がある。そこで、散乱線の影響が異なる8つの作業場において30以上のスペクトルを取得し、アンフォールディング処理により光子フルエンススペクトルを得た。得られた光子フルエンススペクトルから、現行の各種実用量、新たな各種実用量を算出した。線量当量平均エネルギーは、作業場により0.15MeVから1.1MeVまで違いがみられたが、実効線量の管理に用いる周辺線量については、何れも現行実用量に対する比は0.84程度でほぼ一定であった。したがって、これらの場においては、導入により測定値は一律16%程度小さくなるものの、散乱線の影響等によるエネルギーの違いの影響は小さいことが分かった。